【令和9年度】中小企業の概算要求ポイント解説!補助金再編と賃上げ施策

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執筆者船井総研 補助金・ファイナンス支援部
コラムテーマ補正予算・概算要求
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はじめに:令和9年度の概算要求が示す国家の意志と経営戦略

「深刻な人手不足により事業を拡大したくても現場が回らない」

「原材料やエネルギーコストの高騰に対し、取引先への価格転嫁が十分にできず利益が圧迫されている」

「賃上げを求められているが、その原資をどう確保すべきか分からない」

といった悩みを抱える経営者様は少なくありません。

現在、多くの企業がこうした構造的な課題に直面し、従来の延長線上では現状維持すら困難な局面を迎えております。

こうした中、経済産業省より公表された「令和9年度 中小企業・小規模事業者関係 概算要求等ポイント」は、単なる行政の予算要求資料にとどまりません。

ここには、国がどのような中小企業を優先的に後押しし、日本経済を成長させようとしているのかという「国家方針と未来の経営ルール」が凝縮されております。

本コラムでは、令和9年度の概算要求における中小企業・小規模事業者に関連する重要ポイントをわかりやすく解説いたします。

補助金制度の大胆な再編や、賃上げ・設備投資を加速させる税制・金融支援の全貌を解き明かし、経営者の皆様が「今すぐ準備すべき具体的なアクション」を提示いたします。

概算要求の全体像:「稼ぐ力」の強化と「賃上げ」の好循環

令和9年度の中小企業・小規模事業者関係予算は、全体として「稼ぐ力」の強化と賃上げの好循環を実現することを最優先課題として掲げています。

これまでの支援は、コロナ禍からの事業再生や資金繰りの下支えといったセーフティネット的な側面が強く意識されていました。

しかし、高市政権にかわって以降、補助金はバラマキ型から選択・集中型に変動してきています。

令和9年度の方針はさらにそちらの方向性に舵を切っており、国が示している基本的な課題認識と対応の方向性は、以下の通りになります。

  • 変革に挑む企業への集中支援
    売上高100億円超を目指す企業から、1億〜10億円規模の中小企業、小規模事業者、地域社会の課題解決に取り組む「ローカル・ゼブラ企業」に至るまで、構造改革やイノベーションに挑戦する事業者を強力にバックアップします。
  • 17の戦略分野への投資とサプライチェーン参入
    変化に挑む中堅・中小企業が、国が指定する「17の戦略分野」へ投資を行い、グローバルおよび国内の強力なサプライチェーンへ参入することを支援。
    これにより、地域未来戦略や日本全体の成長戦略への貢献を目指します。
  • 切れ目のない安定的な支援
    挑戦する経営者に予見可能性を与えるため、必要な予算を確保し、従来よりも力強く安定的・切れ目のない支援を提供する姿勢を示しています。

(出典:経済産業省 令和9年度 中小企業・小規模事業者関係 概算要求等ポイント)

経営者の皆様が押さえるべき最大の概算要求のポイントは、「国は、現状維持にとどまる企業ではなく、リスクを取って成長(売上拡大、賃上げ、イノベーション)に挑む企業へ予算を徹底集中させる」という明確なメッセージになります。

自社がどの成長フェーズに位置し、どのように変革を遂げるのかを計画書で示すことが、今後の支援獲得の絶対条件となります。

賃上げ起点の成長戦略と価格転嫁・取引適正化の徹底

「賃上げを実施したいが自社の利益が追いつかない」

「大手発注元との力関係で価格交渉が難航している」

という現場の課題に対し、令和9年度の概算要求では攻守両面からの施策が打ち出されています。

(出典:経済産業省 令和9年度 中小企業・小規模事業者関係 概算要求等ポイント)

中小企業向け賃上げ促進税制の抜本拡充

積極的に賃上げを行う中小企業・小規模事業者を後押しするため、国は今後5年間を重点期間と位置づけました。

一人当たりの賃金増加に直接的につながるよう、「全雇用者の給与総額」や賃上げ水準の要件について抜本的な見直しおよび強化が行われます。

生産性向上や設備投資と組み合わせることで、賃上げに取り組む企業への後押しが強化される方針になります。

また、持続的な賃上げに向けた詳細分析調査等にも22億円が計上されています。

官公需も含めた価格転嫁・取引適正化の更なる徹底

どれほど税制や補助金が整備されても、取引先から不当に買い叩かれていては賃上げの原資は生まれません。

国はこの点を最大のネックと捉え、以下の強力な取引適正化策を実施することを想定しています。

  • 中小企業取引対策事業【40億円】
    前年度(R8当初20億円)から大幅増額要求。
    原材料価格等のコスト上昇分を適切に下請け価格へ反映できるよう、取引環境の改善を強力に推進。
  • 「取引Gメン」の拡充と実態調査
    「取引Gメン」によるヒアリングを通じた取引実態 of 把握を徹底。
    さらに「価格交渉促進月間(9月・3月)」のフォローアップ調査や発注者リストの公表、中小受託取引適正化法(取適法)の厳正な執行を推進。
  • 官公需における実勢価格の反映・期中改定
    行政自らが範を示すべく、官公需において最新の実勢価格の反映や期中改定等を、来年度中に全ての国・自治体等で徹底させる計画になります。

下請け側が適正な価格交渉を行うための強力な追い風が吹いていると言えます。

取引先との交渉時には、国の基本方針や官公需における価格転嫁の動きを客観的データとして提示しながら、堂々と価格交渉を進めるための論理武装としてご活用ください。

主要補助金の大幅再編と「成長志向」別の支援施策

中小企業経営者様にとって最も関心が高い補助金施策について、令和9年度は独立行政法人中小企業基盤整備機構運営費交付金として【6980億円】(一部既存基金の内数含む)が概算要求に盛り込まれました。

自社の成長志向や売上規模に応じた形へと整理されています。

補助金・事業名 主な対象・成長目標の目安 主な支援内容と概要ポイント
中小企業成長加速化補助金 売上高100億円超を目指す中小企業 賃上げへの貢献、輸出による外需獲得、地域経済への波及効果が大きい大胆な設備投資等を支援。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業 売上高10億円を目指す中小企業 革新的製品・サービス開発、海外等の新市場進出への設備投資を支援。「売上高10億円を目指す宣言」が原則要件化。
省力化・デジタル・AI投資補助金 人手不足や生産性向上を目指す中小・小規模事業者 業務効率化やAX・DX推進に向け、AIを含むデジタル技術活用や省力化設備の導入を一体的に支援。
小規模事業者持続化補助金 売上高1億円等を目指す小規模事業者 「成長志向の経営計画(仮称)」を自ら策定し、商工会・商工会議所の支援を受けながら行う販路開拓等を支援。

「売上高10億円宣言」が原則要件化する新事業進出・ものづくり補助事業

新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業における最大の変更点は、「売上高10億円を目指す宣言を原則として要件化する」点になります。

単に最新機器を導入するだけでなく、「この投資を通じて自社を売上10億円規模の中堅・成長企業へ引き上げる」という経営計画上の意思表示が不可欠となります。

人手不足を解消する省力化・デジタル・AI投資補助金と「地域AXネットワーク」

人手不足対策として、省力化設備とAI等のデジタル技術を一体的に支援する枠組みが強化されます。

さらに、「地域AXネットワーク事業」により、地域ごとに中小企業、AIサービス提供者、支援者(商工会・商工会議所、税理士、金融機関、高専等)が出会う場が全国に構築されます。業種別ガイドラインの作成・周知も進められ、専門人材が乏しい企業であってもAI導入に伴走支援を受けられる体制が整えられるでしょう。

成長志向の小規模事業者を支える持続化補助金

小規模事業者持続化補助金では、「例えば1億円を目指す」といった「成長志向の経営計画(仮称)」を宣言する事業者への支援が明确化されました。

商工会・商工会議所と連携し、経営規模の拡大に向けた計画的な販路開拓に取り組むことが求められます。

設備投資・M&A・資金調達を支える税制優遇と金融支援

補助金施策のほかにも、企業の足腰を強化し、事業再編やM&A、成長投資を推進するための税制や金融支援策が数多く計上されています。

成長投資を後押しする税制措置

  • 中小企業経営強化税制の拡充・中小企業投資促進税制の延長
    成長志向企業の「稼ぐ力」を高めるため、インセンティブの強化や見直しを行った上で適用期限の延長等がなされます。
  • 交際費課税の特例の延長
    800万円まで全額損金算入を可能とする特例措置の適用期限が延長されます。
  • 生産性向上・賃上げに資する固定資産税の特例拡充
    賃上げ水準の要件見直しを行った上で、赤字企業も含めた研究開発投資や設備投資を後押しするために拡充されます。

M&A・事業再編・事業承継の支援強化

  • 中小企業活性化・事業承継総合支援事業
    財務上の問題を抱える中小企業の収益力改善・事業再生や、後継者不在企業に対する事業承継・事業引継ぎを強力に支援いたします。
  • M&A・事業承継補助金
    M&Aや事業承継に際し、設備投資費用のほか、専門家を活用したPMI(統合プロセス)費用等を支援いたします。
  • 事業承継税制の抜本見直しおよびグループ化税制の延長
    事業承継を契機に「稼ぐ力」の強化に取り組む企業を後押しするため税制の抜本的見直しが行われるほか、中堅・中小企業のM&Aを加速させる中小企業事業再編投資損失準備金の適用期限が延長されます。

成長資金の供給を円滑化する金融支援

  • 中小企業信用補完制度関連補助事業
    信用保証を通じて、民間金融機関単独では対応が困難な成長投資への資金供給を後押しいたします。
  • 日本政策金融公庫補給金・出資金
    日本政策金融公庫を通じて、民間金融機関と連携した成長資金の供給拡大や円滑な融資を実施いたします。

まとめ:経営者が今すぐ着手すべき「3つの準備アクション」

令和9年度の中小企業関係概算要求のポイントを俯瞰すると、国はこれからの日本経済を牽引する存在として、「自らの殻を破り、1億、10億、100億のステージへステップアップすることを宣言し、変革に挑む中小企業」を強く求めていることが明確に読み取れます。

この方針変更をとらえ、競合他社に先んじてスタートダッシュを切るために経営者様が「今すぐ始めるべき3つの準備」をお伝えいたします。

アクション1:自社の「成長宣言」と「中期経営計画」の仮策定

令和9年度の補助金制度では、100億宣言に限らず、「売上高10億円宣言(新事業・ものづくり補助事業)」や「成長志向の経営計画宣言(持続化補助金)」など、経営計画上の明確なコミットメントが極めて重要なカギを握ります。

自社がどの規模・ステージを目指すのかを明文化し、その実現に向けたロードマップ(設備投資、新市場進出、組織体制)を策定することがすべての第一歩となります。

アクション2:人手不足を解消する「省力化・デジタル・AI(AX)」の検討

社内のどの業務工程にボトルネックが存在し、どのプロセスをデジタル化・自動化できるかの棚卸しを行ってください。

「省力化・デジタル・AI投資補助金」の活用を見据え、省力化設備やAIツールの導入可能性を検討することも推奨します。

アクション3:支援機関や専門コンサルタントとの早期連携

公募が本格化してから相談を開拓するのではなく、今の段階から信頼できる専門コンサルタントや支援機関に対し、「令和9年度の概算要求を前提とした設備投資計画や活用できる税制・補助金」について先手を打って相談を開始することが重要になります。

株式会社 船井総合研究所では、令和9年度の最新概算要求動向を踏まえた補助金活用計画の策定や、各種補助金・税制の活用戦略に関する経営相談を承っております。

自社の飛躍的成長に向けた投資戦略の構築につきましては、お早めに専門コンサルタントまでご相談ください。

執筆者 : 船井総研 補助金・ファイナンス支援部

船井総研内の補助金に特化した部隊としてサポートを実施しています。補助金に精通した我々と、業種特化コンサルタントの連携はもちろん、100億企業化コンサルタント、その他グループ会社のITコンサルティング、ダイレクトリクルーティングなど、事業拡大に欠かせない経営ノウハウも、グループを通してサポートが可能です。 補助金活用を入口に、経営全般のお悩みを解決いたします。