10億宣言とは?中小企業庁の最新成長支援策と補助金戦略を解説

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執筆者船井総研 補助金・ファイナンス支援部
コラムテーマ100億宣言,補正予算・概算要求
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10億宣言とは

「10億宣言」とは、売上高1億円から10億円未満の成長志向を持つ中小企業を対象に、国が2026年度の創設に向けて検討を進めている新たな支援スキームです。

先行して実施されている「100億宣言」に続き、より多くの中小企業を成長軌道に乗せ、地域経済の奥深くまで成長を浸透させることを目的としています。
(100億宣言に関するコラムはこちら

この制度では、経営者がメインバンクなど地域金融機関の伴走支援を前提に、売上高10億円の突破や高収益化を目指すビジョンを宣言し、公表します。
本気で自己変革に挑む企業に対して、政府は設備投資などの投資支援、新たな政策金融による金融支援、人材確保などのソフト支援をパッケージとして集中的に提供し、「稼ぐ力」の強化を後押しする仕組みとなっています。

はじめに:労働供給制約社会における「稼ぐ力」の強化

2026年5月20日、中小企業庁が新たに打ち出した「10億宣言」というスキームを打ち出しました。

出典:経済産業省「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略(案)に伴う政策の見直しについて」

現在、日本の中小企業を取り巻く環境は、単なる人手不足を超えた「労働供給制約社会」、すなわち「働く人そのものが減り続ける社会」へと完全に突入しました。

・求人を出しても人が集まらない
・採用コストや人件費が高騰する
・ベテランの引退によって技術承継が進まない
といった構造的課題のなかで、従来の「人数を増やして売上を増やす」という労働集約型(人海戦術型)の経営モデルは限界を迎えています。

こうした背景から、政府は中小企業の「数」を維持する政策から、少人数でも高い利益を出せる「質」を重視した「強い中小企業」づくりへと舵を切りだしています。

国が定義する「稼ぐ力」の核心は、付加価値労働生産性の向上です。

これは、労働投入量(人員や労働時間)を最適化しつつ、企業が生み出す付加価値額(粗利益など)を増加させることで、社員一人当たりの生産性を高めることを意味します。

具体的には、
・適切な価格転嫁の確保や新製品・新サービスの開発による「付加価値額の増加」
・AIや自動化ロボットの導入(AX・省力化投資)による「労働投入量の最適化」
が重要視されています。

中小企業庁は各種政策を総動員し、中小企業の付加価値労働生産性の成長率目標を「5年で15%向上」と定め、2040年の名目GDP1000兆円への貢献を目指す方針を掲げています。

「10億宣言」の概要と対象となる中小企業

このような労働供給制約社会を生き抜く実行装置として創設が検討されているのが、中小企業庁の新スキーム「10億宣言」です。

10億宣言とは、直近の売上高が1億円から10億円未満の成長志向を持つ中小企業を対象に、経営者が「売上高10億円規模への成長、あるいは高収益企業への転換を本気で目指す」という強い意志とビジョンを公表(宣言)する仕組みです。

全国「約60万社」の地域企業を成長軌道に乗せるメカニズム

先行して実施されている「100億宣言」が、売上高10億~100億円の中堅企業候補(全国約9.1万社)の「成長加速」を対象としているのに対し、今回の10億宣言がターゲットとする層は、全国に約60万社も存在します。

一部のトップスター企業だけを支援するのではなく、地域経済の奥深くまで成長を浸透させ、日本経済の土台を総底上げするための裾野拡大メカニズムの構築を目的としています。

10億企業を目指す上での「壁」と求められる自己変革

売上高1億円から10億円への成長の階段を登るプロセスでは、中小企業特有の多くの「壁(課題)」に直面し、成長投資に踏み切れる経営基盤が整っていないケースが少なくありません。政府公表資料でも、この層が抱える生々しい課題例が以下のように整理されています。

10億企業未満の層が直面する6つの課題(壁)

  • 経営面:経営者自身の経営経験が乏しい、あるいは「家族経営」の状態のままシステムや組織の「仕組み」がない。
  • 組織面:社長がプレイングマネージャーとして全てを切り盛りしており、機能分担の仕組みができていない。防衛的賃上げに追われ人材を維持・確保できず、経営を任せられる「番頭・右腕」がいない。
  • 販路面:大手や下請け構造の中で価格交渉力が弱く、自社製品・サービスのブランド化や差別化がされていない。
  • システム面:IT・DX・AIが必要であると分かっていても、自社へ実装できない。
  • 資金面:資金調達力が脆弱であり、日々の返済に追われ、将来のための大胆な投資ができず「設備更新がやっと」の状態である。

出典:経済産業省「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略(案)に伴う政策の見直しについて」

「勘と度胸」から「組織の総合力」への転換

これらの壁を越えて売上10億円・高収益化を達成するためには、経営者自身が「変化」を受け入れる自己変革が不可欠です。

具体的には、「勘と度胸」に頼る属人経営から戦略的経営への転換、社長一極集中から企業組織としての総合力を発揮できる体制(機能分担の仕組み)への移行が求められます。さらに、下請構造からの脱却、価格交渉力の強化、ブランド化・差別化を進めることが「稼ぐ力」を作る上で実質必須となります。

10億宣言の具体的なスキームと「地域金融機関の伴走支援」

経営者は、自社の強みを活かして経営の質を高めるためのビジョンを「宣言」し、その内容を外部へ公表します。具体的な宣言項目としては、政府資料に準じて以下の5つが想定されています。

10億宣言で公表が想定される5大項目

  1. 経営者のビジョン
  2. 事業価値の磨き上げ
  3. 成長アセット(経営基盤)の構築
  4. 地域経済への貢献
  5. 金融機関の伴走支援方針

メインバンク(地域金融機関)のコミットが必須である理由

10億宣言の最大の特徴は、メインバンクである地域金融機関(地銀・信金・信組等)に対して「本気の伴走支援方針」の表明を求める点にあります。

売上10億円未満の層は、100億企業と比べて経営者の経験不足や財務・人材面での課題が多いため、金融機関による規律付け(デッド・ガバナンス)が極めて有効な層であると位置づけられています。
そのため、一時的な資金繰り支援に留まらず、厳しい時期も含めて二人三脚で成長を実現するメインバンクが伴走し、持続的な成長を可能とする「真水の成長資金(プロパー融資)」を十分調達できる経営基盤の構築を目指します。

宣言企業に用意される3つの「集中支援パッケージ」

10億宣言を行い、メインバンクのコミットを得た企業に対しては、政府から経営支援・金融支援・投資支援の3つの施策が集中的に投下される方向性が示されています。

1. 投資支援(補助金の効果的活用)

宣言実現のための設備投資や販路拡大を後押しするため、国の主要な補助金制度と効果的に連動・活用していく方針です。

  • 新事業進出・ものづくり補助金:新製品の開発や高付加価値化、AI導入などの革新的な投資を支援
  • 省力化投資補助金:人手不足を打破するためのロボットや自動化・省人化設備(最大1億円規模)を支援

単発の「機械の買い替え」で補助金を使うのではなく、10億宣言のストーリーと連動させることで、採択の可能性を最大化させます。

2. 金融支援(新たな政策金融の連動)

民間金融機関の通常の融資枠を超えるような大規模な成長投資(M&Aや人材投資、DX投資など)が必要な局面において、その呼び水となる「新たな政策金融(日本政策金融公庫等によるリスクマネー供給)」の創設・連動が検討されており、資金調達面での補完・誘導が行われます。

3. ソフト支援(経営基盤・人材の強化)

まずは成長に向かえるだけの経営管理能力の高度化と基盤構築をサポートするため、ハンズオン支援や経営基盤の構築支援が行われます。また、企業の最大のボトルネックとなりやすい「番頭・右腕」などの幹部人材の確保支援、新たな人材プラットフォームの構築など、ソフト面での支援策が一層充実されます。

10億宣言を実施する前に注意するポイント

中小企業庁が打ち出したこの新支援策は意欲ある経営者にとって巨大な追い風となりますが、「10億円」という数字目標そのものに振り回されて、身の丈に合わない無理な拡大に走るのは禁物です。

まずは、財務諸表などの数字だけでは測れない、自社の「強み」がどこにあるのかを冷徹に見つめ直すことが大切です。その「強み」を活かした成長拡大のストーリーを描かなければなりません。

同時に、「社長一極集中の属人化」「家族経営のままの仕組み」といった経営基盤の脆弱性を直視し、成長投資に耐えうる組織基盤へと変革していくプロセスが求められます。金融機関に対しても、自社の実態を包み隠さず開示し、本気の対話ができる関係性にあるかを見直す必要があります。

※なお、売上高1億円未満の企業に対しても、商工会・商工会議所の経営指導員による伴走のもと、「成長志向の経営計画(仮称)」を宣言し、マル経融資の優先適用や持続化補助金等で優先支援する、小規模事業者向けの成長メカニズムが別途並行して検討されています。

まとめ:専門家と共に「10億宣言ストーリー」の構築から始めよう

中小企業庁が推進する10億宣言は、「現状維持では生き残れない。しかし、本気で変革に挑む企業には国と金融機関が総力を挙げて投資する」という強力なメッセージです。

2026年以後、日本の中小企業は、人海戦術や属人化から抜け出せずに苦しくなる企業と、AI活用・生産性向上で成長する企業に完全に二極化していきます。これからの時代に勝ち残るためには、単発の補助金申請ではなく、数年先を見見据えた「全体戦略(活用ロードマップ)」を描くことが極めて重要になります。

「自社は本当に今、成長の階段を登る準備ができているのか」
「自社の投資計画にどうAX(AI変革)や省力化を組み込むべきか」
について、まずは専門家や支援機関、メインバンクと共に深く掘り下げることから始めてみてはいかがでしょうか。

当社では、圧倒的な制度理解と豊富な補助金採択支援実績を持つ補助金コンサルティングチームが、100億企業化を推進している当社のコンサルタントや財務コンサルタント、業種別コンサルタントと連携して、貴社の10億突破に向けた戦略立案をサポートすることも可能です。

また、10億宣言をいち早く押さえて補助金活用につなげる戦略も立案します。

ぜひお早めに無料経営相談をご活用ください。

執筆者 : 船井総研 補助金・ファイナンス支援部

船井総研内の補助金に特化した部隊としてサポートを実施しています。補助金に精通した我々と、業種特化コンサルタントの連携はもちろん、100億企業化コンサルタント、その他グループ会社のITコンサルティング、ダイレクトリクルーティングなど、事業拡大に欠かせない経営ノウハウも、グループを通してサポートが可能です。 補助金活用を入口に、経営全般のお悩みを解決いたします。