
2025年新設の新事業進出補助金を解説!

はじめに: 新事業進出補助金とは?2025年新設の背景と目的
2025年、政府は新規事業に挑戦する中小企業を支援する「新事業進出補助金」を新設します。
この補助金は、既存事業とは異なる市場や高付加価値事業への進出を支援し、その際に必要な初期投資の一部を補助するものです。
背景には、以下のような課題があります。
● 国内市場の成熟と競争激化
● 物価の高騰や賃上げの影響
● 既存事業単体での売上向上が難しい業界からの脱却
つまり、中小企業が成長が見込める業界や生産性の高い事業へ参入できるよう、この補助金を通じて新市場進出(新規事業)の実施を支援するものです。
新規事業には高額な初期投資が必要であり、資金面でのハードルが存在します。
新事業進出補助金は、建物費や設備投資費、市場開拓に必要な費用の一部を補助することで、資金面のリスクを軽減し、新規事業への挑戦を後押しすることを目的としています。
2025年に新設される、新事業進出補助金の概要
新事業進出補助金は、企業の成長・拡大を目指す中小企業が、新たな市場や高付加価値事業への進出に際して行う設備投資等を支援する制度です。
補助率:1/2
補助上限額:従業員数に応じて補助上限額が設定されており、詳細は以下表の通りです。
従業員数 | 補助上限額 |
---|---|
20人以下 | 2,500万円(3,000万円) |
21~50人 | 4,000万円(5,000万円) |
51~100人 | 5,500万円(7,000万円) |
101人以上 | 7,000万円(9,000万円) |
※補助下限750万円
※大幅賃上げ特例適用事業者(事業終了時点で①事業場内最低賃金+50円、②給与支給総額+6%を達成)の場合、補助上限額を上乗せ。(上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額。)
例えば、従業員数20人以下の企業では2,500万円、101人以上の企業では7,000万円が上限となります。さらに、大幅な賃上げを実施する企業には、上限額の引き上げが適用され、最大で9,000万円まで補助される場合もあります。
補助対象経費:
建物費、構築物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費
公募開始時期は調整中ですが、早めの情報収集と計画策定が求められます。
どんな企業が対象?補助金の申請要件
新事業進出補助金の対象となるのは、既存事業とは異なる新たな事業への挑戦を行う中小企業です。
事業再構築補助金の後継補助金でもあるため、
・市場の新規性
・顧客の新規性
は必須条件となります。
つまり、事業者にとって既存事業で扱ったことの無い新製品又は新サービスを、新規顧客に提供する事業に進出することが求められます。
具体例として、
・機械加工業が半導体製造装置部品の製造に乗り出すケース
・医療機器製造の技術を活かしてウイスキー製造業に進出するケース
などが挙げられています。
また、申請企業は以下の基本要件を満たす3~5年の事業計画を策定する必要があります
基本要件
● 付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増加すること。
● 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、または給与支給総額の年平均成長率が2.5%以上増加すること。
● 事業所内最低賃金が、地域別最低賃金より30円以上高い水準であること。
● 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していること。
これらの要件を満たすことで、補助金の活用が可能となります。
補助金活用経験の少ない企業にとって、上述のキーワードは見慣れないものもあるかもしれません。
自社の検討している新事業が要件に合致しているのか?どのような数値計画だと要件を満たすのか?という点について、補助金申請サポート実績の多い専門家に聞いてみるのが良いでしょう。
事業再構築補助金と新事業進出補助金の違い
事業再構築補助金とは?基本概要をおさらい
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響を受けた企業の事業転換や新分野展開を支援するために、2021年に創設されました。
● コロナ禍で売上が減少した中小企業(※10次公募以降は売上減少要件が不要となる枠が創設)
● 既存事業の再構築や、新たな事業モデルへの転換を目指す企業
を対象としています。
第一回公募における事業再構築補助金の補助率は中小企業で3/4~2/3、補助上限額は最大1億円と高額でした。第13回公募までに、多くの企業がこの制度を活用し、新規事業に取り組んでいます。
第13回の公募が2025年3月26日締め切りで実施されており、これが最後の公募となることが公表されています。
何が違う?新事業進出補助金との比較
事業再構築補助金と新事業進出補助金の主な違いは以下の通りです。
目的の違い
事業再構築補助金
● コロナ禍の影響で売上が減少した企業の支援
● 「ウィズコロナ・ポストコロナ時代」に対応する新市場進出
新事業進出補助金
● 中小企業の成長・拡大を目的とし、新規事業への進出を支援
新事業進出補助金は、売上減少の要件がなく、成長を目指す企業向けの補助金だと考えられます。
どんな企業が活用すべき?新事業進出補助金の活用シーンと事例
新事業進出補助金は、企業が既存の技術やノウハウを活かしながら、新しい市場に進出する際に活用できます。
活用想定ケース
過去の事業再構築補助金の採択事例をもとに、新事業進出補助金での活用が予想される事例をまとめました。
業種転換の事例
● 宿泊業 ➝ 菓子製造業(観光地の土産菓子ブランドを展開)
● 飲食業 ➝ 冷凍食品製造業(人気メニューを冷凍食品として全国販売)
● 介護業 ➝ 菓子製造業(高齢者向けのやさしい食感の菓子開発)
● アパレル業 ➝ アウトドア用品製造業(機能性生地を活かしたキャンプ用品開発)
● IT企業 ➝ 教育サービス業(プログラミングスクールの開講)
● 飲食業 ➝ 宿泊業(接客力を活かしたグランピング・ヴィラの運営)
● 印刷業 ➝ パッケージデザイン業(パッケージの企画・デザイン提供)
● 総合工事業 ➝ 解体・はつり工事業(空き家増加の課題に対応した解体事業進出)
● 農業 ➝ 化粧品製造業(オーガニック素材を使ったスキンケア商品開発)
● 自動車整備業 ➝ 電動モビリティ販売・レンタル業(EVスクーターや電動アシスト自転車の事業展開)
製造業の新規事業進出ケース
製造業では、以下のような新分野への展開が考えられます。
● 金属加工業 ➝ 医療機器製造業(精密加工技術を活かした手術器具や人工関節の製造)
● 自動車部品製造業 ➝ ロボット・ドローン部品製造業(産業用ロボット部品の開発)
● 繊維製造業 ➝ 医療・介護向け製品開発(抗菌・防臭機能を持つ医療用ウェアや介護用シーツの製造)
● 木材加工業 ➝ 高級家具製造業(地元木材を活かしたオリジナル家具ブランドの立ち上げ)
● プラスチック成形業 ➝ 環境配慮型製品製造業(生分解性プラスチックを使用したエコ容器の製造)
● 食品加工機械製造業 ➝ 飲食業(フードビジネス)(自社開発の調理機械を活用した飲食店運営)
こうした事例のように、既存の自社のノウハウや強みを活かしながら新市場に進出することで、企業の成長機会を拡大できます。
新事業進出補助金の詳細
公募要領がまだ公表されていないため、枠などの具体的な内容は不明です。ですが、事業再構築補助金では、成長業種の指定があったように、新事業進出補助金にも、以下のような条件が適用される可能性があります。
1. 2009年~2019年の間に市場規模(製造品出荷額・売上高)が10%以上拡大していること
2. 単年の急増・急減ではなく、継続的に成長トレンドが確認できること
新規事業に進出する際にマーケット調査は重要です。つまり、伸びている市場で売上拡大が見込めることは重要です。どのような業種が成長業種と認定されているのか、成長業種一覧からも一度確認いただくと良いでしょう。
採択のカギは?審査で重視されるポイント
採択されるためには、以下の3点が重要です。
1. 市場ニーズの明確な分析
2. 競争優位性のあるビジネスモデル
3. 具体的な収益計画
特に、単なる事業拡大ではなく、新市場での成長戦略が明確な企業が高く評価される傾向にあります。
また、事業再構築補助金では、第12回頃から審査のポイントが大きく変化しています。つまり、公募要領を熟読し、どのような事業が求められているのかを把握することも重要です。ですから、申請サポート実績が豊富な専門家を活用するのも一つの手段と言えるでしょう。
申請前にやるべきこと|準備すべき書類やスケジュール
申請前に準備すべき事項は以下のとおりです。
● GビズIDの取得
● 提出資料の整備
● 事業計画書の作成
● 設備投資の詳細把握と見積もりの取得(投資総額を把握するため)
● 金融機関との調整
● 資金計画の策定
さらに、過去の採択事例を分析し、自社の計画をブラッシュアップすることも重要です。
新事業進出補助金の第1回公募の具体的なスケジュールはまだ公表されていませんが、2025年4月頃公募開始、5月頃の締め切りが予想されます。
また、中小企業庁が公表した「中小企業新事業進出促進事業」に関する事務局の公募要領によると、令和8年度末(2027年3月末)までに公募回数は4回程度、採択予定件数は計6,000件程度とされています。
まとめ|新事業進出補助金を活用し、成長のチャンスを掴もう
新事業進出補助金は、成長を目指す企業にとって大きなチャンスです。
自社の強みを活かし、新たな市場へ進出することで、競争力を高めることができます。新規事業を検討している企業は、早めに準備を進め、補助金を活用しながら事業拡大を目指しましょう。